中小企業診断士試験は実質的に1次筆記試験と2次筆記試験の2段構えの試験です。(2次口述試験という面接試験もありますが、例年合格率は99%~100%です。)
1次試験、2次試験とも合格率は2割前後であり、2次試験には前年以前の1次試験科目合格者も含まれていることを考えれば、ストレートで一発合格する方の割合は4%未満ということになるでしょう。
この数字だけを見れば、非常な難関にも思えますが、強い決意と正しい学習戦略(そして少しばかりの運)があれば不可能というわけではありません。
1次試験の科目合格は狙ってはいけない
1次試験には平成18年度から「科目合格制度」が導入され、3年間で7科目に合格すれば2次試験へ進むことができるようになりました。
【1次試験合格基準】
(1) 第1次試験の合格基準は、総点数の 60% 以上であって、かつ 1科目でも満点の 40% 未満のないことを基準とし、試験委員会が相当と認めた得点比率とします。
(2) 科目合格基準は、満点の60%を基準として、試験委員会が相当と認めた得点比率とします。
【科目合格の有効期限】
科目合格の有効期間は、3年間です。
一部の科目だけに合格した場合は、翌年度及び翌々年度の第1次試験を受験する際、受験者からの申請により当該科目が免除され、3年間で 7科目すべての科目に合格すれば第1次試験合格となり、第2次試験が受験できます。
実はこの科目合格制度はけっこう曲者です。
1次試験の合格基準をクリアするための、「7科目の総得点の6割以上、かつ1科目でも4割未満がないこと」を満たすための基本戦略は得意科目の得点で苦手科目をカバーすることです。
ところが、この科目ごとの難易度が年度によってものすごく異なります。
もしあなたが経済学・経済政策が得意科目だとしても、たまたま難易度の高い年にあたってしまえば、高得点を取ることは難しくなります。
最悪のケースでは60点ギリギリで科目合格を果たしたとしても、翌年難易度が下がり70点取れるレベルの出題となれば、総得点で10点損することにもなってしまいます。
逆に言えば不得意科目も難易度しだいでは高得点が可能かもしれません。
要するに狙って科目合格制度を使って1次試験の突破は図るのは、あまりにも博打の要素が多いということです。
科目合格はあくまでも、救済手段的な最後の選択肢であるということを忘れないでください。
なお、あまりに勉強時間が取れなくて科目合格を狙うしかないという方もいるかもしれませんが、その場合まずは学習時間を確保できる環境作りから見直すことが必要かもしれません。
厳しいようですが、1次試験でつまずくようでは2次試験の突破はかなり難しいのが事実です。
自分にとって中小企業診断士を目指す意味を今一度見つめ直し、場合によっては撤退することも立派な選択肢のひとつだと思います。
ストレート一発合格のための基本戦略
1次試験で一発合格を狙うのは当然のこととして、2次試験までストレートで合格を狙うにはやはりそれなりのやり方が必要となります。
結論から言ってしまえば、
1次試験と2次試験の学習を同時に進めること
につきます。
1次試験の勉強だけでも手一杯なのに、2次試験の勉強まで一緒になんてできない・・・
とお考えの方もいるかもしれませんが、実際には2次試験の学習を同時に行うことは1次試験の突破の可能性をより高めてくれます。
ご存じの通り、中小企業診断士試験には1次試験と2次試験に共通して関連する科目があります。
企業経営理論
運営管理
財務・会計
【関連のある科目】
経営情報システム
【やや関連のある科目】
中小企業診経営・中小企業政策
考えようによっては、1次試験と2次試験に必要な「知識」そのものは同じ、マークシート式と記述式という解答形式が異なるだけとも言えます。
みなさんには、英単語帳で繰り返し見てもどうしても覚えられなかった単語が、たまたま本屋で目にした雑誌のタイトルになっていることに気付いたその瞬間に記憶に完全に定着してしまった、というような体験はありませんか?
これは、ひとつの英単語を違う角度や体験を通して見ることが、記憶の定着を促進している例です。
診断士試験も同じで、普段全く馴染みのない運営管理の工場関連の用語なども、1次試験のテキストは2次試験の過去問という違ったフィルターを通して見ることで、記憶や理解が進みやすくなります。
つまり、1次試験学習中の2次試験の勉強は、そのまま1次試験の復習にもなるということです。
1次試験前の具体的な2次試験勉強法
それでは、具体的には1次試験前にどの程度の時間を2次試験に割くべきなのでしょうか。
そのことを考える前に、2次試験の勉強方法の内容を分析してみましょう。
まず、基本的に必要な知識はすでに1次試験の学習内容に含まれているので、新たの知識のインプットは必要ありません。
やるべきことは、
① 出題形式や解答にいたる思考の過程を理解すること(過去問と解説の読み込み)
② 実際に過去問題や予想問題などを解いて解答を作成するトレーニング
の2つです。
このうち、1次試験前にやるべきなのは基本的に①の「過去問と解答の解説の読み込み」だけで十分です。
なぜなら、②の実際に手を動かすトレーニングは、1科目ごとに2次試験の試験時間80分に合わせて実際に解答を作成する必要があるため、机の前で十分な時間を取ることが必要であり、さすがに1次試験の学習と並行して行うことは負荷が高すぎるからです。(※1次試験の学習に煮詰まったときに、気分転換も兼ねてやる分には問題ないと思います。)
ちなみに「過去問と解答の解説の読み込み」は「読む」という行為だけなので、スキマ時間や移動時間などに行うには最適の学習内容です。
受験当時サラリーマンだった管理人も、通勤の行きの電車では1次試験のテキストの読み込み、帰りの電車では2次試験の過去問の読み込みなどと決めて行っていました。
ただ、過去問と解説を読むだけとはいえ、1次試験と2次筆記試験の間が2カ月しかない中小企業診断士試験では、それを1次試験前にやっておくのとやらないのとでは大違いです。
仮に1次試験後に2次筆記試験の学習をスタートした場合、過去問分析に1カ月はかかると思うので、実際のトレーニングも1カ月程度しかとれないと思います。
「勉強」というよりも解答作成訓練といったほうがいいような2次筆記試験においては、それに2カ月とれる受験生と、半分の1カ月しか取れない受験生では合格の可能性に非常に大きな差がつくのは言うまでないでしょう。
なお、この実際の解答作成トレーニングは、解答がひとつではない2次試験の場合、自分で答え合わせをすることは難しいので、第3者による解答の添削や評価が必須です。
添削のある模擬試験や、通信講座の添削指導などを活用してしっかりとフィードバックを受けながら、トレーニングを行ってください。
まとめ
ここまで、中小企業診断士試験をストレート一発合格のためのメソッドを解説してきました。
1次試験前から2次筆記試験の勉強をすることは、効率的なだけでなく、
「必ず1次試験は突破する!」
という自分へのコミットメントにもなり、1次科目合格を狙うような受験生とは心意気の点でも圧倒的に有利に立つこともできるでしょう。
結果的に2次試験で涙を飲んだとしても、翌年の再チャレンジに対しても素早いスタートを切れるはずです。
中小企業診断士試験のストレート一発合格は可能です。
まずはそのことを信じて日々の学習を積み重ねていきましょう!